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File.15 オリオン活版印刷室(2023年1月掲載)
2024/11/26
「古くて、あたらしい」活版印刷の魅力。
突起部に付けたインクを転写する「凸版印刷」の中でも、独立した一つ一つの活字(組み並べて印刷に使う金属製の字型)を用いた印刷方法を活版印刷と言います。現代では機器や技術の進化によってほとんど見ることのない印刷技術ですが、その魅力を今に伝えるスポットがオリオンイースト商店街の一角にあります。
「ペーパーレス化やデジタル化によって、紙媒体がメインの印刷業界は変化を迫られています。デジタル分野に舵を切る事業者も多いですが、だからこそ、印刷技術の中でも原始的な、活版印刷の文化や技術を継承する場を作りたいと感じました。」カフェのような外観に、レトロな雰囲気を漂わせる「オリオン活版印刷室」は、2022年1月にオープンした印刷工房です。店内には巨大なエンジンのようなドイツ製の活版印刷機、そして約2万字もの活字を収納した活字棚が並んでいます。その名の通り活版印刷がテーマのお店で、活版印刷の技術を体験することが出来ます。山梨県産手洗き和紙などの紙アイテムも取り揃え、活版印刷と組み合わせたフルオーダーメイドの名刺の作成も可能です。
前述のとおり、活版印刷は現在では旧式化しつつある技術で、活字の字型を鋳造する製作業者も、国内にはわずか2社しか残っていません。オーナーの小澤美寿々(おざわみすず)さんは、自身も印印刷業界に身を置くなかで、紙媒体の衰退も感じながらも、このお店をオープンさせました。
お店に置いてある活版印刷機や、2万文字もの大量の活字は、廃業する印刷屋さんから譲り受けたものがまとんどだそうです。
「活版印刷は、活字を一文字ずつ並べて版を作ります。現在主流の平版印刷に比べ、時間も手間も非常にかかりますが、そのぶん味があって、人の想いが込められているように感じませんか?デジタル化の進む便利な世の中ですが、紙には紙の素晴らしさがあり、紙だからこそ、不便だからこそ伝わる想いがあると思っています。そうした活版印刷の文化や良さを多くの人に知ってもらい、少しでも甲府の賑わいに繋がれば嬉しいです。」
実際に活版印刷された名刺(右図が名刺の文字を拡大した画像です)を見せてもらうと、凹んだ文字面への印刷面は1枚・1文字ごとに違い、そのバラつきに手作業の工程を窺い知ることが出来ます。手漉き和紙という素材も温かみを感じさせ、クラット感のある工芸品のような印象です。その斬新な魅力に、自分だけの特別な名刺を!と、こだわりを持ったお客様も多く訪れるのだそうです。世界に一つだけ!オリジナルメモ帳を作ろう~
紙やデザインを選び、のり付けして製本まで行うことで、印刷技術を学びながらメモ帳を製作します。最後に表紙へ活版印刷を施して、世界に一つ、あなただけのオリジナルメモ帳の完成です!
ご興味がある方、是非ご参加ください。
店主直伝豆知識
~活版印刷の歴史~
活版印刷の歴史は古く、1450年頃ドイツの金細工師ヨハネス・グーテンベルクがブドウやオリーブ油の絞り機からヒントを得て発明したと言われています。金属活字の材料は鉛、線、アンチモンを混ぜた合金で、高温で溶かし、真論を使った鋳型(母型)に流し込み活字が出来上がります。この技法は、今でも基本的には変わらない技法です。すごいですよね!
また、活字を鋳造して販売している活字屋さんは、日本では現在、横浜と新宿にわずか2軒しかないと言われています。今あるこの貴重な活字たちを1文字1文字大切に使っていきたいと思います。オリオン活版印刷室
甲府市丸の内1丁目15-2-1A 営業時間:平日13:00~18:00 土日10:30~18:00(定休日:月・木・祝日)
※本記事は甲府商工会議所だより2023年01月号に掲載しました。お問い合わせ