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甲府盆地の暑さ - 今夏4年ぶり40℃超えか? フェーン現象が後押し(2022年07月掲載)
2022/08/01
甲府盆地の夏の暑さは国内でも指折りです。特に最近の暑さは、私が子どもの頃、ざっと50年以上も前になりますが、その頃と比べると数ランク上です。最高気温30℃以上の日を真夏日と言います。昔はこの真夏日だけで十分に暑さを表現できたのですが、35℃以上が当たり前の最近の暑さは、猛暑日という新しい言葉を気象用語に加えさせました(2007年4月)。そして今や40℃超えの時代。次の言葉は酷暑日、炎暑日、激暑日、極暑日・・・どんな言葉が出てくるでしょうか。
さて、本題の甲府盆地の暑さですが、県内で40℃を超えたのは、県内気温観測10地点の中で甲府と勝沼だけです。ともに甲府盆地の「底」にあたる地点です。甲府は2004年7月21日に県内初となる40.4℃を観測、2013年8月10日に県内最高となる40.7℃、翌11日に40.6℃、2018年7月23日に40.3℃と、4回40℃超えを観測しています。勝沼は2013年8月10日に40.5℃を観測しました。県内では2018年7月以来40℃を超えた日はありません。暑さトップ10から外れた甲府
気象庁は、最高気温の観測史上順位のトップ20を公式サイトで公表しています。いわば日本の暑い場所の公認記録です。甲府は最近では4位まで上がったことがあり、常にトップ10に入っていました。しかし、2020年8月、ついにトップ10から外れ、現在11位に「甘んじて」います(2022年6月現在)。2018、19、20年と全国で40℃超えが続出し、「老舗」の甲府は押し出された格好です。
ちなみに現在の全国1位は静岡県浜松市と埼玉県熊谷市の記録41.1℃です。わずか0.4℃に11地点がひしめきあっている状況で、温暖化が進むなか、順位変動が激しくなっています。猛暑予想のこの夏、早くも6月25日に群馬県伊勢崎で40.2℃を観測しました。甲府が4年ぶりに40℃超えを観測し、勢いで41℃を超えて全国1位奪取も面白いかもしれません。「勘弁してくれよ」「不謹慎だ」と言った声も聞こえそうですが、熊谷市が「暑さ日本1」をうたって全国にPRしているように、甲府も暑さでビジネスチャンスが生まれるかもしれません。さて、どんな条件がそろうと甲府盆地は40℃を超えるのか。連日暑い日が続くと、盆地特有の地形効果で熱い空気がたまります。朝から熱い空気に包まれると、気温上昇のスタートが高くなります。日中の強い日差しでグングン気温が上がり、38℃、39℃とうだる暑さになります。そしてここからが40℃超えのポイントになります。風です。40℃超えのポイントは風
40℃を超えさせようとする風が、南アルプスから高温の風が吹き降りてくるフェーン現象の風です。一方、気温を下げさせようとする風が、駿河湾から富士川沿いに北上してくる海風です。フェーン現象の風に勢いがあると40℃の壁を突破しますが、富士川沿いの風が足早に入ってくると、気温上昇は落ち着きます。最後のひと押しとなる風が、どちらになるのか。・・・これは「風任せ」になります。※本記事は、6月25日時点の情報を基に作成しています。四季折々の気象現象を、甲府盆地を中心に紹介していきます。「あの現象はそうだったんだ」と理解が進めば幸いです。コラム趣旨
北野芳仁
1981年4月山梨日日新聞社入社、2000年3月気象予報士取得、2018年1月から日本ネットワークサービス(NNS)気象情報室長、現在に至る。甲府市出身。
日本ネットワークサービス(NNS)気象情報室
2018年1月発足。県内唯一の気象庁の予報業務許可事業者。多様なメディアで気象情報を発信しているほか、気象講演での講師派遣やお天気教室の開催、気象コラムの執筆や気象に関するコンサルタントも行っています。
※本記事は甲府商工会議所だより2022年07月号に掲載しました。お問い合わせ