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雪 - 太平洋側と日本海側の雪(2023年01月掲載)
2023/02/01
図1は甲府の各年における最も積もっ た時の積雪量の推移です。平年値は 15㎝となりますが、2014年の114㎝がいかに異常であったかが分かります。年々の 変動を均して見ると1930年代以降は次第に少なくなる傾向が続いています。一方で、最近でも40㎝を越える年があり、単純に積雪が減っているともいえません。雪が少ない年が多くなっているからと、油断はできません。一般に雨や雪は低気圧に伴う雲から降 ります。山梨を含む太平洋側の雪も低気圧が原因ですが、本州の南岸に沿って進む特徴から南岸低気圧と呼ばれています。この低気圧が近くを通れば通る程、山梨県の雨や雪は多くなります。南岸低気圧は暖かい南の海である南西諸島付近で生まれるため、暖かい空気で出来ています。南岸低気圧があまり近付くと暖かい空気の影響で雨として降ります。雪として降るためには、南岸低気圧自体の暖かい空気の影響を受けにくくなるよう、ある程度離れていることが必要です。かといってあまり離れると、そもそも雪を降らせ る雲がかかりません。微妙に程よい距離が必要です。さらに距離だけではなく、低気圧の発達具合や北からの寒気の状況などによっても左右されます。色々な条件が複雑に絡み合っているため、予報はとても 難しく、9月に出される冬を対象とした予報では、太平洋側の雪の予報は、現在は出されていません。なお、2014年2月の大雪は、南岸低気圧が近くを通り(いつもより降る量が多い)、かつ、東海上の高気圧に行く手を阻まれて速度が遅くいつまでも影響を受けました(いつもより降る時間が長い)。近くを通過したので、南岸低気圧の暖かい空気の影響により雨で降ってもおかしくは ありませんでした。しかし、山梨県付近へは大陸からの寒気が入っていたため、全て雪として降ってしまいました。この冬の甲府(最大114㎝)は、札幌(最大113㎝) や青森(最大87 ㎝)、北陸の各都市など居並ぶ雪国を抑えて、全国の都道府県庁所在地で最も雪深くなりました。太平洋側の雪
一方、日本海側の雪は冬型の気圧配置で降ります。太平洋側の様に低気圧など、その日その日の気象状況と言うよりも、冬型の気圧配置の出やすさの様な、冬を通した平均的な状況に左右されます。このため雪は、冬の平均的な気温と関係があるなど比較的予報がし易く、9 月に出される冬を対象とした予報でも、日本海側は雪の予報が出されています。筆者は雪国でも大雪と言える「56豪雪」(1980年 月~1981年3月に かけて北陸を襲った大雪)の時に富山に居ました(図2)。甲府市出身の筆者にとって日本海側での初めての冬であり、二日連続して雪が降ることに驚いたり、見た こともない荒れ狂う海に見たこともない 激しさで雪が降る風景に感動したり、何 から何まで驚きの連続でした。あの大雪 の時の甲府市でさえ1mを越えたのは 時間だったのに対して、当時の富山市では 約1ヵ月も越えていました。日本海側の雪
四季折々の気象現象を、甲府盆地を中心に紹介していきます。「あの現象はそうだったんだ」と理解が進めば幸いです。コラム趣旨
北野芳仁
1981年4月山梨日日新聞社入社、2000年3月気象予報士取得、2018年1月から日本ネットワークサービス(NNS)気象情報室長、現在に至る。甲府市出身。
日本ネットワークサービス(NNS)気象情報室
2018年1月発足。県内唯一の気象庁の予報業務許可事業者。多様なメディアで気象情報を発信しているほか、気象講演での講師派遣やお天気教室の開催、気象コラムの執筆や気象に関するコンサルタントも行っています。
※本記事は甲府商工会議所だより2023年01月号に掲載しました。
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